ポンタの想い出

俺に明日はあるのか?

まどかマギカ

製作者が語る「まどかマギカ」ヒットの理由
まどか☆マギカ」は魔法少女のイメージを覆した

映画界のキーパーソンに直撃

f:id:god634526:20160125081011j:plain

2011年1月から深夜アニメとして放送され、異色の人気を集めた「魔法少女まどか☆マギカ」シリーズ。どんな願いごとでもかなえてもらえる代償として、絶望をまき散らす災厄の遣い・魔女と戦う魔法少女になる使命を背負うことになった少女たちの過酷な運命を描き出すダークなファンタジードラマだ



かわいいキャラクターにもかかわらず、物語はダークかつハードという内容が大きな話題を呼び、テレビシリーズをベースに2012年に公開された『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [前編]始まりの物語』『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [後編]永遠の物語』は2作合わせて興行収入11億円を突破した。そしてこれまでのストーリーを受けて、脚本・作画、すべてをイチから作り出す、完全新作として製作されたのが10月26日に公開となる『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語』だ。

総監督・新房昭之、脚本・虚淵玄ニトロプラス)、キャラクター原案・蒼樹うめ、アニメーション制作・シャフト。そして彼らを中心に多くのメインスタッフが再集結した本作。劇場版では、テレビ版の最終話から地続きとなる世界の中で、魔法少女たちに新たな試練が降りかかるさまが描かれる。

f:id:god634526:20160125081049j:plain

今回は、本作の企画を立ち上げたアニプレックスの岩上敦宏プロデューサーに、本作が熱狂的な支持を集める理由、そして新たに生まれ変わった劇場版の完成を目前に控えた思い、作品に対する手応えなどについて聞いた。

f:id:god634526:20160125073950j:plain

満場一致で「面白そうだ」

――そもそも「まどか☆マギカ」という作品はどのようにして生まれたのでしょうか?

この作品は、いわゆる原作となる小説やコミックをアニメ化したものではなく、アニメ用にイチからストーリーやキャラクターを作ったアニメオリジナルの作品です。新房昭之監督と、彼がずっと組んできたシャフトというアニメスタジオ、そしてキャラクター原案の蒼樹うめ、脚本家の虚淵玄といったメンバーでオリジナルアニメを作ったら面白いんじゃないかなというのが始まりでした。この4者でという思いつきに新房監督も乗ってくれたので、それでとんとん拍子に進んだというわけです。

最初のアイデアメモのようなものを読んだ時点から、満場一致で「面白そうだ」と。脚本の制作を進めていくうえでは、たとえば5稿、6稿、場合によっては10稿といった具合に、直しを重ねていく例も多いのですが、この作品に関してはほとんどなかったですね。せいぜい2稿とか3稿とかそんな感じでしたね。

f:id:god634526:20160125082028j:plain

ハードな内容は意図していた

――こんなかわいい絵なのに、内容は、少女たちの心の暗部を描き出すようなハードな物語になっていきます。それは最初から意図したものだったのでしょうか?

そうです。そこの驚きも含めての企画のコンセプトでした。虚淵さんが書くシリアスでテーマ性のあるストーリーは本当に面白いので、これをかわいらしいキャラクターが演じることによって広がりが出るのでは、というのがひとつありました。みなさん魔法少女に対するある種のイメージは持っていると思うので、その中で「魔法少女でこういうことやるんだ」というような、その驚きは大きなフックだったと思います。



それから蒼樹うめ先生とは、新房監督、シャフトと私も含めて「ひだまりスケッチ」という蒼樹さん自身が書いた漫画のアニメ化作品でご一緒したとことがありますが、その際に「ひだまりスケッチ」とはちょっと違ったシリアスなキャラクターの表情も見る機会がありまして。これを組み合わせられたら面白いよね、という気持ちはありました。

f:id:god634526:20160125094231j:plain

――テレビ放映後の反響は非常に大きかったと思いますが、ご自身ではどう感じていましたか?

最初から大ヒットしている原作をアニメ化したわけではなかったですからね。おそらく1話、2話の時点では、まだ気にしていなかった方も多かったと思うんですが、放送を重ねるにしたがってどんどん盛り上がっていって。これはアニメオリジナルならではの反響で、本当に驚きましたね。

f:id:god634526:20160125084028j:plain

――劇団イヌカレーさんのメランコリックでどこか不気味な世界観をもった独特な美術空間異空間設計が、非常に印象的なのですが、あれはやはり最初からのアイデアだったのでしょうか?

劇団イヌカレーさんの起用は新房監督です。そこは本当に新房さんのすごいところだと思うのですが、脚本上では魔女空間の具体的な設定は指定されてはいなかったので、それは触手系のクリーチャーかもしれないし、昔話に出てくる魔女かもしれないのですが、脚本を読む人によってそのイメージは違ってくるものでした。しかしそこはありきたりではない、新しい映像にしたいということで、劇団イヌカレーさんにお願いしたということです。

f:id:god634526:20160125094316j:plain

――あの美術があるからこそ、普通のアニメじゃない、アートな感じが醸し出されたと思います。

そう思います。ただ1話が完成した時点では、すごく面白いと思いつつも、やはり、どう受け止められるんだろうと心配する気持ちもありました。

f:id:god634526:20160125083205j:plain

当初は離れる視聴者を覚悟した

――それが自信につながったのはどれくらいからなんですか?

よく言われるんですが、やはり3話でキャラクターの死を描いたところで一気に盛り上がった感じはありましたね。当時は「これを放送したら離れてしまう視聴者はいるかもしれない。でも、面白いと言ってくれる人は必ずいますよ」ぐらいの気分だったので、あそこまで皆さんが楽しんでくれたのは、いい意味での誤算でした。

――普段それほどアニメを見ないであろう人たちも、いったん本編を見てしまえば引き付けられるところが本作にはあると思います。理由がどこにあるとお考えですか?

f:id:god634526:20160125094339j:plain

やはりエンターテインメント作品として良質な作品なんだと思います。たとえばレンタルビデオ屋さんでどれを借りようかというとき、アニメもテレビドラマも洋画も邦画も同一線上だと思うのです。その中でどれを見てみようかな、どれが面白いのかなと考えたとしても、やはりこの作品は薦められる作品だと思います。自画自賛というよりも、作ったスタッフがすごいなというふうにあらためて感じています。

――見方によっては、テレビ版で物語が完結しているようにも感じられます。劇場版が企画されたのはどの段階だったのでしょうか?

テレビ版の反響を受けてからですね。もともと僕らもテレビ版で完結していると思っていましたから。それがこれだけヒットしたので、この世界観でまた作品を作りたいねという声が起こり、そこから始めたということです。内容としてはもちろんスピンオフのようなものもありえるでしょうし、どういうものがいいのかと話し合ったわけですが、その中で、やはりこのキャラクターたちが活躍する続編的なものをやろうという結論になり、今回の新編につながったわけです。

f:id:god634526:20160125094404j:plain

――映画劇場版は、テレビ版と地続きの物語になっているのでしょうか? パラレルワールド的な別の世界を描くというやり方もできそうですが。

地続きですね。とはいえ、この世界観にはタイムリープはありますし、並行宇宙的な概念もありますから、そこはあえて限定せずに、お客さまにはいろいろなことを想像しながら見に来てほしいなと思っています。

――本当にギリギリまで制作されているとのことですが、具体的にどこにこだわって時間がかかるものなのでしょうか?

アニメーション制作という絵作りの部分ですね。そもそも通常のアニメ映画の倍くらいのカット数があるので。情報量も多いですし、かつワンカットワンカットがすべて創意工夫にあふれている内容なので、これを作るのは本当に大変なことだと思いますね。

f:id:god634526:20160125074625j:plain

テレビ版との比較というより絶対値としてすごい作品

――テレビ版でもアクションシーンが多かったですし、おそらく劇場版でもそうだと思います。それも制作において時間がかかる要因の一つなのではないでしょうか?

f:id:god634526:20160125074920j:plain

岩上敦宏(いわかみ・あつひろ)
1972年群馬県出身。1997年にアニプレックスに入社。現在は、アニプレックス執行役員、第2企画制作グループ代表、プロデューサーとして活躍。彼がプロデュースする主な作品として、「ひだまりスケッチ」シリーズ、「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」といったテレビ作品のほか、「空の境界」シリーズ、「カラフル」「私の優しくない先輩」などの劇場作品も多数手がけている。
本当に大変ですね。特に今回の新編は大変なアクションシーンを作っていますから。テレビとの比較論というよりも、絶対値としてすごい作品です。ひとつの映像作品としても必見だと思います。

――新作の公開に合わせた前編・後編のリバイバル上映も、劇場公開時と同じ43館で行われます。新作公開に合わせた旧作上映をその規模でやるのは珍しいのではないかと思うのですが。

やはり前編・後編を見てから、新編を見てもらうと120%楽しめる作品ですからね。リバイバルも一緒に楽しんでいただければいいなと思っています。

f:id:god634526:20160125095951j:plain

――そういう意味で、コアなファンだけでなく、新しいファンにもアピールしなければいけないと思います。どういう展開でいこうとしているのか、そういった展望はありますか?

コアなアニメと言っても、アニメを見ることに抵抗がない層というか、面白いアニメなら見てみようかなという層は実は多いんだと思います。そういう人たちが今まで「まどか☆マギカ」を知らなかったとしても、見てもらえば確実に驚きのある作品だと思います。

f:id:god634526:20160125100030j:plain

――今作では配給をワーナー・ブラザース映画さんが務めます。

そこはやはり公開規模の違いがありますね。前回の前編・後編は43館で自社配給でした。43館という館数であれば、宣伝までを含めても、何とか自分たちで頑張れたんですが、129館となるとなかなか大変な規模なので、そこはワーナー・ブラザース映画さんと協力してやらせてもらったというところですね。

今のアニメ界をどう見る?

――『まどか☆マギカ』の話しから少し離れるかもしれませんが、今のアニメ界のトレンドをどう見ていますか?

f:id:god634526:20160125100102j:plain

あまり考えていないですね。アニメの場合は、実写と違って制作に時間がかかるので、今、これが当たったからやろうということで動いたとしても、放送されるのは2年後だったりしますからね。むしろ普遍的な面白さや、映像としての普遍的な価値といったものが必要だと、自分でプロデュースするときには思っています。

――アニプレックスさんが発表される企画は、個性豊かなものが多いように思います。そういったアニプレックスさんの社風というものを、どのように感じてらっしゃいますか?

f:id:god634526:20160125102109j:plain

社風というよりも、プロデューサーそれぞれ個性があって、彼らが真剣に考えて企画を立ててきますからね。やはりプロデューサーの特色が結果となって出ているかなと思います。

――ちなみに観客の年齢層、ターゲットというものは考えていらっしゃいますか?

年齢を特に定めるということはしていませんが、若いファンは大事だと思っています。

f:id:god634526:20160125102137j:plain

――岩上さんは、部下からの企画にゴーサインを出される立場かと思います。ゴーを出す際にどのようなことに気をつけていますか? 

そこはケースバイケースですね。ただ、もちろん僕だけの趣味でラインアップを作っているわけでもないですし、かといって彼らがやりたいものがすべて全部実現できるわけでもない。とはいえ、若い人がトライできるようなチャンスがいっぱいある会社だとは思いますね。

f:id:god634526:20160125102216j:plain

――今は「まどかマギカ」で手一杯だと思うのですが、今後の予定などもお聞きかせください。

まどか☆マギカ」と同じシャフトさんでやってる「<物語>シリーズ」がテレビでオンエア中ですし、10月末にはビデオ第一巻(「猫物語(白)」が発売になります。また、『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語』の上映前には「<物語>シリーズ」と「まどか☆マギカ」とがコラボした「劇場マナー告知短編映像」が流れる予定です。これは「<物語>シリーズ」の西尾維新先生がシナリオを書いたショートムービーです。それからシャフトさんとは、来年の1月には「週刊少年ジャンプ」で連載されている「ニセコイ」という作品もやりますし、今後もいろいろなラインナップの作品を手掛ける予定です。

f:id:god634526:20160125102318j:plain

魔法少女まどか☆マギカ - Wikipedia魔法少女まどか☆マギカ - Wikipedia