もう逃げる所は無い
ベネズエラが国家崩壊の危機に直面し、経済緊急事態を宣言
2016年1月15日、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領が「経済緊急事態」を宣言する騒ぎとなっている。ベネズエラはもう国家崩壊寸前であり、どうにもならないところにまで追い込まれてきている。
ベネズエラがこのようになったのは、原油価格の暴落に原因がある。ベネズエラは産油国であり、輸出の95%を石油に頼っている国である。
つまり、この国の浮沈は石油価格にかかっていたわけで、石油が暴落したらこの国も危機に陥る構造だったのだ。原油価格は2014年の半ばから怒濤の如く暴落するようになっており、今もまだその傾向が続いている。
ベネズエラの国内経済は大混乱し、インフレ率は2015年で210%を記録していた。食料も、衣料品も、日用品も不足して、人々は何も買えない状態に陥ってしまった。
そのためにベネズエラ政府は国営スーパーで配給制を始めるようになったが、それでも物資が手に入らず、反政府デモも過激になっている。
政府はそれを徹底弾圧で臨んでおり、警察では抗議デモを押さえられなくなって、今や民兵すらも動員している。
経済停滞と、物不足と、失業と、インフレ
そんな中で2015年12月6日には、国会議員選挙が行われてマドゥロ大統領率いる与党は惨敗、政治的混乱もより加速していく流れとなった。
ベネズエラの輸出が、ほぼ石油しかないのであれば、この国が立ち直るのかどうかは石油価格がどう推移するかで決まる。
石油価格が持ち直さないのであれば、政権が変わったところでベネズエラが正常化する要素はまったくない。
悪いことに石油価格はさらに落ち込んでいる。
2015年はベネズエラにとって最悪の年だったが、2016年も最悪が継続するということであり、これがマドゥロ大統領の「経済緊急事態」の宣言につながっている。
ベネズエラ政府には、もう打つ手はない。インフレ率はさらに上昇し、このままでは2016年のインフレ率は300%を超えて400%に跳ね上がるのではないかとも予測されている。
ベネズエラの失業率は2012年までは7%で推移していて、これも決して低い数字ではないが、現在はもうそれどころではなく、2015年は14%に達していたはずだというのがIMF(国際通貨基金)の予測だ。
経済停滞と、物不足と、失業と、インフレが同時に起きているわけで、これは典型的な「スタグフレーション」である。
様々な局面の経済状況の中で、最悪の局面を示しているのが、この「スタグフレーション」であるのは言うまでもない。
少し考えればそれがどれほどひどい状況なのか想像できるはずだ。何しろ仕事がなくなって、モノもなくなって、かろうじて手に入るモノは今までの3倍も4倍も高い価格が付いているのだ。
手に入らないのは贅沢品のようなどうでもいいものではない。牛乳、米、肉、卵、野菜、果物、コーヒー、洗剤、トイレットペーパーのような、日々暮らす上で大切なものである。
ベネズエラでは新聞社や出版社も続々と廃刊に追い込まれているのだが、これは弾圧の結果そうなったわけではない。その前に印刷するための「紙」が手に入らなくなってしまったからである。