ポンタの想い出

俺に明日はあるのか?

私待つわ


私待つわ




【読売采配遊戯】高橋由伸「動じない男」


打たれろ、打たれろ、もっと打たれろ。

80年代初頭、全盛期の江川卓登板試合の後楽園球場では、売店の売り上げが通常時よりも低かったという。 味方ファンだけでなく、敵のファンも背番号30を見るために座席から立たなかったからだ。 そう言われてみれば、今日の東京ドームでも俺は一度も席を離れていない。 本当に2016年の菅野智之は球場の客をトイレにも行かせないくらい凄い。
俺なんか合コンでおネエちゃんがトイレに行ったまま2時間くらい戻って来ない
のに。 泣けるぜ。あの頃を思い出すとマジ泣けてくる。 「この男は巨人のエースになれるかなんてレベルではなく、日本のエースになれるかどうかという逸材だ」 4年前、菅野が入団した直後に死亡遊戯ブログでそう書いたらコメント欄は荒れまくった。 あんたアホかと。でも、書いて良かったよ。実際そうなってるし。 自軍が3点取った瞬間に「あ、勝った」と確信できる投手は巨人では上原浩治以来だと思う。




懐かしい。 そうなんだよ、今年の由伸巨人はなんか懐かしいんだよ。 絶対的エースがバンバン完投して、野手はスタメン固定。 原さんの時みたいにギリギリまで先発メンバーが分からないなんてことはない。 小林も立岡も開幕から全試合スタメン出場。 使うと決めたらとことん使う。 ってどんだけ田原使ってんねん。 あ、すいません。



ギャレットだってそうだよ。 四球数が多くて出塁率はそれなりのナイスガイなんつって無理矢理擁護してきたけど、冷静に見たら打率2割3分台。 これでいいのかっていいわけはない。 エルドレッド、ビシエド、バレンティンとセ各チームの助っ人大砲と比較すると迫力不足は否めへん。 でも由伸は頑なに「4番ギャレット」にこだわった。 これが原監督なら早めに見切って、イースタンで好調の岡本君を突然4番起用とかしそうじゃん。 実際、去年の大型連休では1軍昇格即「4番レフト大田」だったわけだから。


【読売采配遊戯】高橋由伸「動じない男」

で、由伸が我慢し続けた結果、4番ギャレットは首位攻防の広島戦で貴重な6号ツーラン。 サードで使い続ける村田さんだって芸術的ゲッツーに豪快な一発でリーグ9位の打率317まで上昇。 例えるなら由伸監督は「打たぬなら打つまで待とうホトトギス」的な家康采配。 ちなみに選手を入れ替えまくる原辰徳は「打たぬなら代えてしまえホトトギス」の信長采配。 再生工場ノムさんは秀吉タイプで「打たぬなら打たせてみせようホトトギス」みたいなさ。 だから、ファンもとりあえず由伸と一緒に待ってみようか…という雰囲気になってきてんじゃん。 待つぜギャレット 、あたしも待つわ小林、そんな感じ。



よく由伸監督は動かないと言われる。 いや「動かない」というよりも「動じない」って感じだよね。 何があっても動じない。 ローテの危機? トランキーロ、焦んなよと支配下登録されたばかりの長谷川潤を先発抜擢するとかさ。 現役時代の背番号24は涼しい顔で簡単にホームラン打つから、他球団の選手間ではこう呼ばれてたらしいよ。 「クールビューティー」ってさ。 良かったよ、俺らは焦りまくるダサい高橋由伸なんか見たくない。


何事にも動じない男。 選手でも監督でも、由伸は由伸のままである。


【読売送別遊戯】高橋由伸「振り返らない天才」

おいおい来シーズンの巨人は大丈夫か?

2015年最後の東京ドームのバックネット裏からそう思った。 ファンフェスタで完璧な高橋由伸の引退セレモニー直後に開催されたホームラン競争。 キャプテン坂本は見事なポップフライを打ち上げまくり、奈良のジョニー岡本はもはや声が小さすぎて何を言っているのか分からへん。 参加4選手の今季本塁打数は坂本12本、亀井6本、岡本1本、大田1本。 全員合わせて20本。ラーメンの具がナルトだけみたいな物足りなさ。 ゴメン、もうちょいパンチが欲しいっす。 俺らみんな由伸と阿部に甘えすぎた。 巨人の生え抜き和製大砲はここ数年、というか21世紀に入ってからずっと2人に頼りっぱなし。 そして、ついにその背番号24も現役引退しちまった。

引退セレモニーの始まりから終わりまで、緊張しながらも高橋由伸は最後の最後までいつもの高橋由伸だった。 菅野とのラスト勝負の打席に入る仕草も、大観衆に向けての簡潔で力強い挨拶も、胴上げされる控え目の笑顔さえも。 たいした男だ。 だって、スピーチで突然号泣されたりしたら、超満員の観客も動揺して怒るじゃん。 もっと現役やらせてやれみたいなさ。 自分が軽卒な行動や発言をすれば、チームを壊しちまう。 そんなのは百も承知でヨシノブはヨシノブをやり切った。

じゃあ建前と綺麗ごとだけの全員門限夜7時の合コンみたいな空っぽのセレモニーだったのか? いやそんなことはない。 場内のオーロラビジョンに慶応大学時代からの選手生活を振り返る特別映像が流れた時のことだ。 東京ドームには、その偉大なる足跡のBGMとしてOasisの『Don’t Look Back In Anger』が鳴り響いた。 突然、キャリアの最後に自身の登場曲には使ったことのないイギリスのロックバンドの代表曲。 なぜこの曲だったのか?

今回の選曲が由伸本人の希望なのか、制作スタッフのチョイスなのかは分からない。 ただ、完璧すぎて鳥肌が立った。 曲名「Don’t Look Back In Anger」をそのまま日本語訳すれば「過ぎたことに怒らないで」となる。 突然の引退、電撃的監督就任、この流れに納得のいかないファンもいるだろう。 でも「過ぎたことに怒ったりしないで」と言葉なきラストメッセージ。 凄い。なんて粋な演出なんだろう。

もちろん歌詞に決まった意味なんかない。捉え方も人それぞれだ。 けど、甘いマスクで泥臭いダイビングキャッチを繰り返した背番号24の激情に、Oasisノエル・ギャラガーの男臭い熱唱は死ぬほど似合っていた。 過去を振り返るな。 クールに見えて、誰よりも熱かった男は後ろを振り返らず未来へと進む。 分かったよ、俺らも一緒に付き合うよ。


さらば天才バッター。 来年からよろしく由伸監督。


See you baseball freak・・・





プロ野球死亡遊戯さんより
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