川内原発 メルトダウン
川内原発の真の恐怖とは?
白抜き黒枠データを公表する
信じがたい九州電力と原子力規制庁の正体
広瀬 隆
福島第一原発事故を半年前に予言した書『原子炉時限爆弾』で、衝撃的な事実を発表したノンフィクション作家の広瀬隆氏。
壮大な史実とデータで暴かれる戦後70年の不都合な真実を描いた『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』が話題を呼んでいる。
このたび、新著でおそるべき予言をした著者が、連載第1回に続き、鹿児島県にある川内(せんだい)原発の知られざる危険性を、様々なシミュレーションから緊急警告する!
「日本地理」と「風の流れ」が教える危険性
広瀬 隆(Takashi Hirose)
1943年生まれ。早稲田大学理工学部卒。公刊された数々の資料、図書館データをもとに、世界中の地下人脈を紡ぎ、系図的で衝撃的な事実を提供し続ける。メーカーの技術者、医学書の翻訳者を経てノンフィクション作家に。『東京に原発を!』『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』『クラウゼヴィッツの暗号文』『億万長者はハリウッドを殺す』『危険な話』『赤い楯――ロスチャイルドの謎』『私物国家』『アメリカの経済支配者たち』『アメリカの巨大軍需産業』『世界石油戦争』『世界金融戦争』『アメリカの保守本流』『資本主義崩壊の首謀者たち』『原子炉時限爆弾』『福島原発メルトダウン』などベストセラー多数。
さて、前回述べたように、再稼働を目前にしている鹿児島県の川内原発の耐震性は、地震の一撃で大事故を起こす。しかもその地震が目前に迫って、風前の灯である。
ところが昨年、2014年7月16日に出された「九州電力株式会社川内原子力発電所1号炉及び2号炉の発電用原子炉設置変更許可申請書に関する審査書案」(審査書案)には、耐震性の計算式も、このような耐震性の計算のもとになった計算図表もまったく見当たらない。
この審査書案を基に、原子力規制庁の官僚が、ゴーサインを出したはずなのだが、これでは、まともな原発かどうか、誰にも判断できないではないか!
まったく書かれていないどころか、最近出された川内原発の「工事計画認可申請書」は、耐震性だけでなく、重要な部分が、真っ白になって、黒枠で囲まれているのだ。
昔は、都合の悪いデータを墨塗りにして出すことがよくあったが、今や、そちこちが真っ白けである。それを、平気で公開している。われわれが、原子力規制庁の官僚を呼んでヒアリングをおこない、
「一体、誰がこのようにひどい文書を発表するように、あなたたちに命じたのか?責任者はただではすまないぞ」
と質問すると、
「原子力規制委員会の田中俊一委員長の指示による」という。
ここまで悪質になった原子力行政を、なぜテレビと新聞が痛烈に批判しないのだろうか?なぜ、みな、平気で生きているのだろう?
鹿児島県は九州の最南端にある。そこに川内原発があるのだ。 この地理は、きわめて重要である。
読者は、ここで第二のフクシマ原発事故が起これば、日本はどうなると思いますか?
フィリピン海で発生する台風の進路は、偏西風に乗って北上する。つまり、日本列島が斜めに走っている方向と同じく、北東に向かって、沖縄から九州〜四国〜本州〜北海道へと風が走るでしょ?
だから日本の天候は、西から東へ変化するのだ。したがって、原発事故で出た放射能の流れる方向も、これとまったく同じ方向に流れる。
東京を含む東日本地域で
大量の「癌」&「心筋梗塞」が発生する!
4年前のフクシマ原発事故では、そのため、放出された放射能の8割が、図の黒い矢印で示したように、その偏西風に乗って太平洋に落ちた。2割だけが陸上に降りつもった。
その2割でさえも、東京を含む東日本全域が、これから「おそるべき大量の癌発生」の時期に突入しようとしている。
なぜなら、放射能の被害は、4年から5年の潜伏期を過ぎると、どっと症状が現われるからだ。
フクシマ原発事故から4年を過ぎた今が、ちょうどその大量発症のスタート時期である。
福島県内では、子どもたちの甲状腺癌が、すでに70倍を超える発症率に達しているのだ。福島県だけではなく、
人口1300万人の首都・東京を含めた、東日本全域で大被害が進行中である。また、症状は癌だけではない。おそらく空前の数で、心筋梗塞が発症するだろう。
その警告のために書いたのが、今回の『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』である。
読者は、自分と家族の身を守るために、すぐこの書を読まれたい。
放出された放射能は、読者が想像しているよりはるかに天文学的な、危険な量である。
しかも、地上に降りつもった放射性セシウムは、100分の1になるのに200年かかるのだから、ほとんどが地上に残っている。大被害の発生は、いよいよこれからスタートするのである。
さて、この凄惨な被害を出したフクシマ原発事故に比べて、明日にも起ころうとしている川内原発の事故では、どうなると思うだろうか?
フクシマ原発事故のように放射能の2割が降りつもるのではなく、放出される放射能の「全量」が、さきほどの日本地図に示した赤い矢印のように、偏西風に乗って日本列島に降りつもることは、子どもでも分るだろう。
つまり陸上の作物は、すべて食べられなくなる。水も飲めなくなる。空気が汚染されるのだから、呼吸もできなくなる。
川内原発事故時の
おそるべきシミュレーション
一方、九州大学応用力学研究所の広瀬直毅《なおき》教授たちによる 「川内原発における放射性物質流出事故における海洋拡散シミュレーション」では、左の図のように、太平洋沿岸は、北上する暖流の黒潮によって、千葉県の銚子あたりまで沿岸を放射能が一気になめつくす。
カツオがこの海流に乗って泳いでいる。その先は、フクシマ原発の沖合なので、寒流の親潮がすでに大汚染している。
もっとおそろしいのは、日本海側である。
対馬海流も九州から北上して、北海道まで、全域の海を汚染する。この日本海は、内海なので、放射能はほぼ永久にそこにとどまるのだ。
こうして陸も海も、食料の全滅した国が、ニッポンと変るのである。
この地獄図のなかに入る被害者は、読者だけではない。国会議員も含まれる。テレビと新聞の関係者も含まれる。電力会社の社員も含まれる。
ところが、理解を超えることに、彼らがその“第二のフクシマ原発事故”の責任者なのである。
そのため、膨大な数の国民が、川内原発の再稼働に反対して、デモと集会をくり返しているというのは、当然の怒りだと思いませんか?現在の政治家を選んだ結果が、こうなったのです。
では、原子力規制委員会や原子力規制庁の人間を誰が選んだかといえば、この政治家たちなのだ。つまり、ほとんどの悪事は、人事によって決定されてきた。いわば、悪循環に陥っているのが、日本の実態だ。
火山噴火の「身の毛もよだつ」恐怖
火山の噴火が続いている九州なので、噴火のおそろしさについても、ふれておこう。
4年前の福島第一原発では、津波をかぶったために、すべての電源を失うという最悪の事態となって、コンピューターも何も動かないまま、原子炉が最悪のメルトダウン事故に突入した。
では、火山の噴火によって、同じことが起こらないだろうか?
福島第一原発を開発したアメリカのゼネラル・エレクトリック社(GE)に入社し、技術者として18年間働き、原発建設にも携わってきた専門家である佐藤暁《さとし》氏は、通常の噴火で起こりやすい原発大事故について議論するべきだとして、以下の重大な警告を発している。
火山灰は、硫酸イオンを含んでいるので、少々の雨などで湿気を帯びると、火山灰が送電線に降りつもって、電気が地面にショート(短絡)してしまう。それを防ぐには、停電させるほかないので、福島第一原発と同じように原発の外部電源は完全に失われる。そうした緊急事態に備えて、非常用のディーゼル発電機が、原発内部には備えられている。
フクシマ原発事故では、その非常用のディーゼル発電機が津波をかぶって使えなくなったのだ。
原発内部のすべての電源になるこの命綱のエンジンも、運転すれば過熱してくるので、これを冷却しなければ、運転ができない。
つまりディーゼル発電機室の内部を大量の空気で冷却する必要がある。
その冷却用空気に外部から火山灰が取り込まれてくるのがこわいのだという。
なるほど、それを防ぐために、ディーゼルエンジンには、自動車のエンジンと同じように、空気を浄化するフィルターがついている。このフィルターに火山灰が付着するので、目詰まりを起こしてオーバーヒートし、最終的にはエンジンが停止する。福島原発事故で起こったと同じ、全電源喪失 に至るのだ。
川内原発は、日本の火山学者が、口をそろえて、「こんな火山地帯にあってはならない原発だ」と言っている、おそるべき原子力発電所なのである。
なぜ、『東京が壊滅する日』を
緊急出版したのか
このたび、『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』を緊急出版した。
現在、福島県内の子どもの甲状腺ガン発生率は平常時の70倍超。2011年3〜6月の放射性セシウムの月間降下物総量は「新宿が盛岡の6倍」 、甲状腺癌を起こす放射性ヨウ素の月間降下物総量は「新宿が盛岡の100倍超」(文科省2011年11/25公表値)という驚くべき数値になっている。
東京を含む東日本地域住民の内部被曝は極めて深刻だ。
映画俳優ジョン・ウェインの死を招いた米ネバダ核実験(1951〜57で計97回)や、チェルノブイリ事故でも
「事故後5年」から癌患者が急増。フクシマ原発事故から4年を迎える今、『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』で描いたおそるべき史実とデータに向き合っておかねばならない。
1951〜57年に計97回行われた米ネバダの大気中核実験では、核実験場から220キロ離れたセント・ジョージで大規模な癌発生事件が続出した。220キロといえば、福島第一原発〜東京駅、福島第一原発〜釜石と同じ距離だ。
核実験と原発事故は違うのでは?と思われがちだが、中身は同じ200種以上の放射性物質。福島第一原発の場合、3号機から猛物プルトニウムを含む放射性ガスが放出されている。これがセシウム以上にタチが悪い。
3.11で地上に降った放射能総量は、ネバダ核実験場で大気中に放出されたそれより「2割」多いからだ。
不気味な火山活動&地震発生の今、「残された時間」が本当にない。
子どもたちを見殺しにしたまま、大人たちはこの事態を静観していいはずがない。
最大の汚染となった阿武隈川の河口は宮城県にあり、大量の汚染物が流れこんできた河川の終点の1つが、東京オリンピックで「トライアスロン」を予定する東京湾。世界人口の2割を占める中国も、東京を含む10都県の全食品を輸入停止し、数々の身体異常と白血病を含む癌の大量発生が日本人の体内で進んでいる今、オリンピックは本当に開けるのか?
同時に、日本の原発から出るプルトニウムで核兵器がつくられている現実をイラン、イラク、トルコ、イスラエル、パキスタン、印中台韓、北朝鮮の最新事情をはじめて触れた。
51の【系図・図表と写真のリスト】をはじめとする壮大な史実とデータをぜひご覧いただきたい。
「世界中の地下人脈」「驚くべき史実と科学的データ」がおしみないタッチで迫ってくる戦後70年の不都合な真実!
よろしければご一読いただけると幸いです。
<著者プロフィール>
広瀬 隆(Takashi Hirose)
1943年生まれ。早稲田大学理工学部卒。公刊された数々の資料、図書館データをもとに、世界中の地下人脈を紡ぎ、系図的で衝撃な事実を提供し続ける。メーカーの技術者、医学書の翻訳者を経てノンフィクション作家に。『東京に原発を!』『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』『クラウゼヴィッツの暗号文』『億万長者はハリウッドを殺す』『危険な話』『赤い楯――ロスチャイルドの謎』『私物国家』『アメリカの経済支配者たち』『アメリカの巨大軍需産業』『世界石油戦争』『世界金融戦争』『アメリカの保守本流』『日本のゆくえ アジアのゆくえ』『資本主義崩壊の首謀者たち』『原子炉時限爆弾』『福島原発メルトダウン』などベストセラー多数。
川内原発がメルトダウンしたら
起こって欲しくないが、起こらないという保証もないのが、原発の破局事故である。既存の川内原発(各89万KW)で炉心溶融事故(メルトダウン)が起これば、下表のようになるのだそうだ。増設計画が撤回されない3号機だと、日本最大の159万KWだから、もっと大きな被害になるはずだ。
1996年の数字であるから、各市町村の人口は増減している。合併で単一の自治体でなくなった自治体はあるにせよ、全部聞き覚えのある名前である。各市町村の名前を聞けば、誰それの顔も思い浮かぶ。川内原発で大事故が起これば、逃げなければ命を失うのである。はたして逃げおおせるだろうか? 逃げても原発難民である。田畑を失い、牛等家畜を失い、故郷を失う。生活基盤を失い地域社会は崩壊するのだ。たかだか電気をつくるためにこんなに危険なものに手を出す方がおかしい。
社会通念では、こんなにハイリスクなものに手は出さないし投資はしない。まるでロシアンルーレットである。Fukushimaを経験した今、すぐに手を引くべきだ。九電の経営者らは社会通念を忘れたのか?
彼らは本当に日本人なのか?
広瀬 隆氏
東京が壊滅する日−フクシマと日本の運命より
KAZASHIMOさんより
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