ポンタの想い出

俺に明日はあるのか?

牛丼つゆだく


牛丼つゆだく




【読売成人遊戯】辻内崇伸「28歳、元プロ野球選手」


「ネガティブを潰すのはポジティブではない。没頭だ」

オードリー若林正恭の著書『社会人大学人見知り学部 卒業見込』を読んだ。 「M-1グランプリ」総合2位をきっかけに突然売れ、社会人デビューした当時の様子を書いている。 世間と自分の価値観のズレ、世渡りの上手いおっさんにもなりきれず若者と呼ぶには歳を取りすぎたリアル。 なにもそこまで悲観的にならんでも…という箇所から、あー分かるというところも多くて一気に読み切ってしまった。 読んでる途中で気付いたけど、若林氏と俺は同世代だ。 だから「毎日のように聴いていたカート・コバーンの歌声が響かないことが嬉しくもあり、寂しくもある」という一文にはヒリヒリくる。 で、30を過ぎ、自らの20代を振り返った時に「牛丼食ってただけじゃねぇか!」と叫ぶシーンは少し泣けた。






世の中で一番悲惨なのは学校を卒業して、社会に出たばかりの「20代の若い男」だと思う。 基本的に金はないし、仕事の経験値もほとんどない。 就職したら、この間まで馬鹿にしていたダサいネクタイを締めたオヤジたちに𠮟られる日々。 学生の時に遊んでくれた同世代のおネエちゃんたちは、年上の男たちとスカした店で合コン中。 なんでやねん…深夜にひとりかっ食らう牛丼と悲しいくらいに吉野家が似合っちゃう俺。 マジ情けなくて笑えてくる、つゆだくの夜。

だが、多くのプロ野球選手はこの「こんちきしょう牛丼」を食わないまま大人になる。 だって学生の頃から地元のヒーローで、プロ入りしたら同世代が見たこともないような大金の契約金を手にするわけだから。 そりゃあ選手によっては心のどこかで世の中を舐めちまう。 羨ましい反面、大変だろうなと思う。 先週、書泉グランデで開催された死亡遊戯本サイン会ゲストとして、元巨人ドラ1の辻内崇伸さんに来ていただいた。 辻内氏と言ったら泣く子も黙る156キロ左腕で大阪桐蔭時代は甲子園のスーパースターだ。 1軍未登板のまま巨人を13年限りで退団し、28歳になった今は日本女子プロ野球レイアのコーチとして指導する日々。



イベントのトークコーナーで「プロ野球選手時代の初任給で買ったものは?」という質問があった。 ここで辻内さんは「ウン十万円の高級スーツ」と答え、隣で「えっ?ジブンの初任給の2倍っす」と圧倒される俺。 そしてイベント終了後、舞台裏で「今日のスーツもカッコいいですねぇ」と聞いたら、辻内さんは笑いながらこう言ったのだった。 「コレ洋服の青山です」 いやぁアオヤマって着やすいですよと笑う185センチのビッグマン。

たぶん、プロ野球選手を辞めるということは、青山のスーツを受け入れるということだ。 そこで躊躇して数万円のスーツに引いてたら、第2の人生なんて歩めない。 名刺を持ち、ひとりで会場入りし、ひとりで地下鉄に乗り帰っていった元巨人ドラ1サウスポー。 覚悟を決めた28歳の辻内崇伸は、ジャイアンツ球場であがいていたあの頃よりカッコよく見えた。

時間は絶対に戻らない。 いつの日か、笠原も犯した罪を償い青山のスーツが似合う大人になってほしい。 そう願う。




See you baseball freak・・・



プロ野球死亡遊戯さんより
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